ARKitによる空間認識技術のコモディティ化


  • AR
  • 2017/10/19

こんにちは。インフォコム技術企画室のo2です。

今日はAppleのARKitを利用した空間認識と、空間共有を紹介します。

市況や技術トレンド

まずは、最近のVR/MR/AR業界の状況を見ていきます。
GREE VR CapitalにGoldman SacksのVRレポートのまとめがあり、PSVRが2017年2月時点で91万台。ここ最近の発表では、6月には100万台との情報もあり、成長ペースは緩やかになっているように見受けられます。

また、MRについてはMicrosoft HoloLensやGoogle Tangoといったデバイスが2016年末に製品が登場しましたが、販売台数は不明で(おそらく数万台)、まだまだ一般への普及には時間がかかりそうです。

そういった中で、今年6月にAppleが発表したARKitはARの民生化を狙った製品になります。
ARtillryによると9月リリース時点でARKitに対応するiPhoneは3億8千万台、今年中には5億台のiPhoneで利用可能と予測され、注目を浴びています。

空間認識技術のコモディティ化

このARKitはどのような点が今までのARと違うのでしょうか?
これまでのARは画像認識(マーカー型、マーカーレス型)や、GPSを使ったロケーション型(Google Glass,pokemon Go等)が主でした。
今回登場したARKitはこれまでHoloLensといった専用デバイスで使われていた空間認識を、技術の発展や取捨選択で、既存のスマホで利用可能にしたのが大きな特徴となります。

hikaku.png

具体的には、HoloLensでは空間全体をマッピングしていたのを、ARKitでは現行の端末のモーションセンシングとカメラのイメージを解析することで、空間の一部、水平の平面と特徴点を検出するといった負荷が少ない新しい手法で空間認識を実現しています。

poingcloud.png

実験で作ったアプリ

今回実験で作成したアプリは、ホストサーバーを介した双方向通信で、オブジェクトを相互にやりとりする内容になります。

animated.gif

手法としては、現実に置かれたQRコードの位置と向きを絶対座標としてそれぞれの端末に読み込ませ、オブジェクトの相対座標を共有することで、それぞれ別の端末でも同じ位置にオブジェクトが表示される仕組みです。

absolute.png

下記の動画のように、プレイヤー視点で、相手の画面を見ることで、オブジェクトが共有出来ていることが確認出来ました。


QRから絶対座標を取得する処理フロー

ARカメラの画像フレームからVisionを介してQRコードを取り出し座標を取得します。

qrcodeflow.png

自己位置を共有

空間を認識することでオブジェクトの共有以外にも自己位置の共有が可能です。
自己位置の相対座標を共有することでお互いの位置を知ることができます。

selfpotision2.png

下記の動画のように、第三者視点で見ると、端末の位置にアバターが表示され、移動するとアバターがついてくるといったことが確認できました。

いらすとやさんで第三者視点と、自己位置の共有を表現するとこんな感じです。

perspective.png

空間共有は何に使えるの?

舞台設計や、災害シュミレーション、医療などで使えると考えられています。
例えば、舞台設計であれば、大きな空間のイメージを共有するために、大道具の設置や、その後の片付けが必要となります。
空間共有を利用することで、リアルな空間上にリアルサイズの仮想オブジェクトを配置することで、作業コストの削減が見込めます。

what.png

まとめ

  • ARは空間認識へ

    • より現実と融合した表現
  • スマートフォンでARがコモディティ化

    • 専用ハードから一般のデバイスへ
  • 空間の共有

    • 複数の端末を持ち寄っての共同作業

「みんなが使えるAR」で、これからも新しい体験が増えていくことが考えれます。

おまけ: ARKit + Unity 処理フロー

visionapicallback.png

AndroidのARプラットフォーム

AppleからARKitが出たのを追いかける形でGoogleからARCoreの発表がありました。
今年冬のリリース時には1億台のAndroid端末に対応を予定しています。
実装はARKitに倣う形となっており、ARKitとの違いは、WEBと、VPS(Visual Positioning System)の対応を進めていく点のようです。
VPSが一般化することで、Google Mapsの屋内地図とも連動する未来が予測できます。
ARCoreのこれからが楽しみです。

今後の展開

今後は、ARを使った現実のトラッキングデータの活用や、AIと組み合わせた様々な活用方法を模索していきたいと考えております。

以上、インフォコム技術企画室のo2が紹介させていただきました。